住宅ローンの金利上昇は返済額にどう影響する? シミュレータで確認してみよう

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【寄稿者:2級FP 井本ちひろさん】

2022年に入り、住宅ローンの固定金利が引き上げられています。これから住宅ローンを組む予定の方は「金利上昇でどんな影響が出るんだろう」と不安に思うのではないでしょうか。

金利の上昇は住宅ローンの総返済額に大きく影響するので、引き上げ時に慌てないためにも返済額への影響がどの程度であるかを知っておくことが大切です。

今回は、2022年の金利上昇事情をはじめ、金利の引き上げが家計に与える影響を説明していきます。金利ごとに返済額のシミュレーションもしていきますので、参考にしてください。

2022年の住宅ローンの金利上昇事情

2022年に入り、これまで超低金利が続いていた住宅ローンの金利に変動がみられました。

まずは、2022年の金利事情について説明していきましょう。

変動金利はしばらく低金利が続くと予想される

固定金利引き上げのニュースが話題になっていますが、変動金利はいまだに超低金利が続いています。変動金利は「短期プライムレート」という短期金利がベースになっており、日銀の金融政策が直接影響するからです。

現在(2022年)日銀は「マイナス金利政策」という金融緩和を導入し、金利の上昇を抑えています。マイナス金利政策の解除は「賃金が上昇し、持続的なインフレが続く状態になったとき」だと発表されていますが、日本の賃金はこの30年間上昇していません。

賃金が上昇する見通しすら立っていないため、数年のうちにマイナス金利政策が解除される可能性は極めて低く、しばらくは低金利が続くと予想されます。

長期固定金利は値上げ傾向

2022年に入り、全期間固定金利型住宅ローン「フラット35」の金利が6ヶ月間連続で引き上げられています。2022年6月末には、国内大手5行も長期固定金利の金利を引き上げることを発表しました。

この発表を受け、なぜ固定金利だけが上昇しているのかと疑問に思った方も多いでしょう。

固定金利のみが上昇している理由には、固定金利は国債利回り(長期金利)の上昇やアメリカでの金利上昇が関係しています。

固定金利も変動金利と同様に日銀の金融政策にコントロールされているものの、国債利回りや海外金利の影響も受けやすいという特徴があります。そのため、国債利回りの上昇や海外での金利上昇が波及して、住宅ローンの固定金利も引き上げられたのです。

国債利回りはいまだ上昇傾向にあり、アメリカでの金利上昇も続いていることから、しばらくの間は固定金利の上昇は続くと予想されています。

住宅ローンの金利上昇が家計に与える影響は?

固定金利はすでに上昇傾向にありますが、変動金利もこの先引き上げられる可能性があります。住宅ローン金利の上昇は、家計にどのような影響を与えるのでしょうか。

総返済額が大きくなる

金利が上昇すると支払い利息が増える分、総返済額も大きくなります。住宅ローンは長期にわたって返済していくので、ほんの少し金利が上昇しただけでも総返済額に大きな影響を与えてしまうのです。

そのため、月々に返済できるギリギリの金額でローンを借り入れた場合、金利上昇によって返済が困難になる可能性もあります。場合によっては、教育資金や老後資金を用意できなくなることもあるかもしれません。

どの程度影響するのかは、後ほどシミュレーションしていきましょう。

元本の返済に時間がかかってしまう

変動金利の場合、金利が上昇すると元本の返済に時間がかかってしまいます。変動金利の金利は半年ごとに見直されますが、見直し時に金利が上昇したとしても実際に返済額に適用されるのは5年に1度です。

さらに金利の引き上げ上限も125%までと定められているため、変動金利が上昇したとしてもすぐに月々の返済負担が増えるわけではありません。

これらの内容だけを聞くと「月々の負担が増えないなら安心」と思うかもしれませんが、注意しておきたいのが「未払利息」の発生です。

未払利息は、利息の金額が月の返済額を上回ることによって返済できなかった元本部分を指します。

金利が上昇すると「ローンを毎月返済しているのに、ローン残高が減らない」という状態になりかねないということ。変動金利の場合には、金利の上昇によって未払利息が発生するリスクがあることも念頭に置いておきましょう。

住宅ローンの返済額を金利ごとにシミュレーション

前項では、金利上昇が家計に与える影響についてお伝えしました。では、金利が上昇すると返済額はどのように変わっていくのでしょうか。

次の条件で住宅ローンを借り入れたと仮定し、「JLsim 高機能住宅ローン返済シミュレータ」を使ってシミュレーションしてみましょう。

【借り入れ条件】

・借り入れ金額:3,000万円

・返済期間:35年

・ボーナス返済なし

・元利均等返済

変動金利の金利が上昇した場合

まずは、変動金利の返済額をシミュレーションしていきましょう。

変動金利:金利0.5% 
毎月の返済額77,875円
年間の返済額934,500円
総返済額32,707,560円
変動金利:金利0.6% 
毎月の返済額79,208円
年間の返済額950,496円
総返済額33,267,429円

金利0.5%と0.6%で借り入れる場合、月々の返済だけをみれば2,000円の差しかありません。しかし、総返済額をみると55万円もの差が出ています。金利はたった0.1%上がるだけでも、総返済額に大きな影響が出ることがお分かりいただけるでしょう。

では、年率0.5%だった金利が10年後に1%に上昇した場合には、返済額はどのように変わるのでしょうか。シミュレーションしていきましょう。

変動金利:金利0.5%→1% 
毎月の返済額(1年目〜10年目)77,875円
毎月の返済額(11年目〜35年目)82,750円
年間の返済額(1年目〜10年目)934,500円
年間の返済額(11年目〜35年目)993,000円
総返済額34,170,069円

10年間は0.5%だった金利が11年目に1%に上昇した場合、全期間を0.5%で返済するときと比べて150万円もの差がでました。0.5%の上昇でも総返済額が大きく変化したので、1%から1.5%、2%と上昇が続くと利息は雪だるま式に増えていき、その分総返済額も大きくなります。

固定金利の金利が上昇した場合

固定金利にはフラット35のような「全期間固定金利」や固定期間を自分で選べる「期間固定型」があります。期間固定型の場合には固定期間が終了した時点で金利が見直されるため、上昇後の金利が適用されます。

そのため、固定期間終了後に金利上昇の影響を受ける可能性があるのです。固定金利が上昇すると返済額はどのように変わるのか、返済額をシミュレーションしてみましょう。

まずは、全期間固定金利のシミュレーション結果を見ていきます。

全期間固定金利:金利1.5% 
毎月の返済額91,855円
年間の返済額1,102,260円
総返済額38,579,007円

全期間固定金利は返済期間の金利が固定なので、返済中に金利が上昇しても影響を受けることはありません。しかし、期間固定型と比べると金利はやや高くなります。

では、固定期間10年は1.3%で借り入れ、11年目〜35年目の25年間を2%で借り入れた場合のシミュレーションを見ていきましょう。

変動金利:金利1.3%→2% 
毎月の返済額(1年目〜10年目)88,944円
毎月の返済額(11年目〜35年目)96,515円
年間の返済額(1年目〜10年目)1,067,328円
年間の返済額(11年目〜35年目)1,158,180円
総返済額39,627,683円

全期間を1.5%を借り入れるよりも、当初は1.3%だった金利が固定期間終了後に2%になるほうが総返済額は100万円も増えています。

引き上げ後の適用金利にもよりますが、金利見直しのタイミングで金利が上昇していると、結果として総返済額は大きくなってしまうのです。

全期間固定金利以外の金利で契約した場合、金利上昇のリスクを必ず背負うことになります。返済額のシミュレーション結果をもとに、どのタイプの住宅ローンを借り入れるかを家族で話し合ってみてください。

シミュレータを活用して金利上昇時の対策を考えておこう

本記事では住宅ローンの金利上昇の背景やリスク、返済額への影響について説明してきました。住宅ローンは長期にわたって返済をしていくので、金利がたった0.1%引き上げられただけでも総返済額に大きな影響が出ます。

金利の動向は誰も正確に予測することはできませんが、上昇のリスクや対策は考えておかなければなりません。

JLsim 高機能住宅ローン返済シミュレータ」を使えば、金利が上昇した際の返済額も詳細にシミュレーションできます。金利上昇時に慌てないためにも、金利の引き上げを想定して返済額のシミュレーションを行い、無理のない範囲で住宅ローンを検討しましょう。


【寄稿者:井本ちひろ プロフィール】
住宅ライター。大学で得た経験とFP資格の知識を活かし、
家づくりや住宅資金、火災保険、相続など、住宅とお金に関する記事を中心に活動中。
子育て中の母でもあり、主婦目線での貯蓄、資産運用にも関心あり。
サイト: https://lit.link/imotowriter


※JLsim編集部注※

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