住宅資金・教育資金・老後資金について考えよう

JLsimの上手な活用法

【寄稿者:2級FP FP心平さん】

子育て世代の方は、お仕事や家事育児に追われて、お金のことは後回し…という方も少なくないのではないでしょうか。

子育て世代が準備しなくてはいけないお金は、主に住宅資金・教育資金・老後資金の3つがあります。このお金をただ行き当たりばったりで準備するのではなく、きちんと計画を立てることで、少ないお金で必要な金額を準備できる可能性が高くなります。

本記事を読むことで、
・住宅資金・教育資金・老後資金の優先順位
・効率的に資産運用するための、住宅ローンのお得な活用法
がわかります。

将来の資金計画に役立つJLsim 高機能住宅ローン返済シミュレータを活用して、実際いくらお得になるのかも見ていこうと思います。

住宅資金・教育資金・老後資金の優先順位

まず住宅資金を貯めて、住宅資金が終わったら教育資金を貯めて、教育資金が終わったら老後資金を貯めて…と、ひとつずつ順番に準備しようと考えていませんか?
効率的に準備するためにも、優先順位をきちんと考えておきましょう。

優先順位と3つの理由

住宅資金・教育資金・老後資金のどれから準備にとりかかると良いでしょうか。それはずばり、老後資金です。理由は大きく3つあります。

①住宅資金や教育資金が必要なタイミングはバリバリ働いているので、労働収入で補填ができる。
②住宅資金は住宅ローン、教育資金は奨学金や教育ローンで借りることができるが、老後資金は借りることができない。
③老後資金の準備を後回しにしていると、複利運用の時間の効果をじゅうぶんに得られない。

複利の効果については後述しますが、ポイントは「老後資金はいちばん遠い未来のことだけど、後回しにしてはいけない」ということです。
老後には、健康面の問題と、定年後も再雇用などで働ける環境があるかどうかわからないという問題があります。
お子さんの手が離れるとき、自分は何歳になっているかを考えると、イメージしやすいかもしれません。

お得な貯め方はどちら?

ここでクイズです。

Aさんは30歳から毎月3万円ずつ、子どもが小さいうちの10年間だけ積み立てました。40歳から60歳までは、積み立てせず寝かせて運用のみ行いました。

Bさんは子どものお金が落ち着いた50歳から、毎月5万円ずつ、10年間積み立てました。

Aさんは元本が360万円、Bさんは元本が600万円です。2人とも年利3%で運用できた場合、60歳になったときに資産がより大きくなっているのはどちらでしょう?

ここでJLsim 高機能住宅ローン返済シミュレータを使ってみましょう。このシミュレータは、住宅ローン返済の試算だけでなく、投資運用の試算もすることができます。

Aさんの場合
まずAさんの試算です。まず毎月3万円を10年間積み立てた運用結果を出します。
シミュレータに次の数値を入力します。

・住宅ローン返済期間:10年(住宅ローン期間と運用期間は同じになります)
・投資運用額:0万円
・想定利率:3%
・積立投資:毎月3万円

すると、運用結果は4,192,177円となりました。次に、この金額を20年間年利3%で運用した結果を出します。
シミュレータに以下の数値を入力します。

・住宅ローン返済期間:20年(住宅ローン期間と運用期間は同じになります)
・投資運用額:419万円
・想定利率:3%
・積立投資:毎月0万円

結果は7,628,793円となりました。元本が360万円だったので、倍以上になりましたね。

Bさんの場合
次に、Bさんの試算です。5万円を10年間積み立てた結果を出します。
シミュレータに以下の数値を入力します。

・住宅ローン返済期間:10年(住宅ローン期間と運用期間は同じになります)
・投資運用額:0万円
・想定利率:3%
・積立投資:毎月5万円

結果は6,987,005円となりました。元本が600万円だったので、約100万円増やすことができました。

AさんとBさんの結果をご覧になって、いかがでしたでしょうか。

Aさんは元本360万円で、7,628,793円になりました。
Bさんは元本600万円で、6,987,005円になりました。

どちらの方がお得かは一目瞭然ですね。

複利運用は時間を味方につけるべし

AさんもBさんも、積み立て期間は同じ10年でした。しかし、Aさんは時間を味方につけることで、複利運用の効果をより大きく得ることができました。
年率はあくまで予定であり、資産運用にはリスクも伴いますが、長く時間をかけることでリスク分散にもなります。

少ない金額かつ低リスクで大きな資産を作るには、時間を味方につけるのがいちばんです。
Bさんのように、50歳から毎月5万円を積み立てることも素晴らしいことですが、Aさんのように早いうちに少額でも積み立てておくメリットをご理解いただけたかと思います。

住宅ローンに頭金を入れる効果

老後資金を後回しにしないために、具体的にどのような方法があるでしょうか。ここで考えたいポイントが、住宅ローンの頭金です。

家を買うときに、少なからず頭金を入れなければいけないと思っている人がとても多いと思います。

確かに頭金を入れることで、支払う利息を減らすことができます。しかし、それと同時に住宅ローン控除による還付金額も減ってしまいます。

では、頭金を入れることで、実際にいくらお得になるのでしょうか。JLsim 高機能住宅ローン返済シミュレータを使って、頭金ありとなしの場合で検証します。

頭金ありの場合

物件価格を3,000万円とします。
頭金を300万円、借入額は2,700万円で想定して試算してみます。
シミュレータに以下の数値を入力します。

・借入金額:2,700万円
・借入利率:0.5%
・返済期間:35年
・返済方式:元利均等
・控除(ローン減税)限度額:年間40万円
・控除率:1%
・控除年数:10年
・年末月設定:12ヶ月目が初年度年末

結果は、利息合計が2,436,762円、ローン控除総計が2,304,859円でした。
つまり、正味利息が131,903円となります。

頭金なしの場合

物件価格を3,000万円として、頭金なしで全額借入する想定で試算してみます。
シミュレータに以下の数値を入力します。

・借入金額:3,000万円
・借入利率:0.5%
・返済期間:35年
・返済方式:元利均等
・控除(ローン減税)限度額:年間40万円
・控除率:1%
・控除年数:10年
・年末月設定:12ヶ月目が初年度年末

結果は、利息合計が2,707,560円、ローン控除総計が2,560,960円でした。
つまり、正味利息が146,600円となります。

頭金を入れていくらお得になったか

頭金300万円を入れた場合の正味利息が131,903円、
頭金なしの場合の正味利息が146,600円となりました。その差14,697円です。
つまり、頭金300万円を入れたことで、35年間で14,697円お得になったということです。
では、もしこの300万円を頭金に入れずに、35年間運用していたら、いくらになるでしょうか。

頭金を入れずに運用した場合

300万円を頭金に入れずに、35年間3%で運用する想定で試算します。
以下の数値をシミュレータに入力します。

・借入金額:3,000万円
・借入利率:0.5%
・返済期間:35年
・返済方式:元利均等
・控除(ローン減税)限度額:年間40万円
・控除率:1%
・控除年数:10年
・年末月設定:12ヶ月目が初年度年末
・投資運用額:300万円
・予定運用利率:3%
・積立投資:毎月0万円

結果、300万円は35年間運用することで8,561,371円になりました。
正味利息が146,600円なので、差し引き損得は8,414,771円となります。

頭金300万円を入れて35年間で14,697円お得になることを選ぶか、300万円を35年間運用して8,561,371円の運用益をとるか。

もう一目瞭然ですね。

もちろん、利率はあくまで予定です。
ただ、3%で運用することは長期でやればそんなに難しいことではありません。

住宅ローンの頭金を考えていた人は、こういう視点で、改めてそのお金の使い方を考えてみてはいかがでしょうか。
老後資金の準備を後回しにしないために、こうした選択肢もあるということを知っておいて損はないと思います。

住宅ローン控除の還付金の使い方

もう住宅を購入しているから、頭金を運用する話は参考にならないのだけど…という方もいらっしゃると思います。そんな方には、住宅ローン控除の還付金の使い方を考えて頂ければと思います。

皆さんは、住宅ローン控除の還付金をどのように使っていますか? 臨時収入だ〜と浪費してしまったり、生活費の一部になっていたりしていませんか?

もちろんお子さんの習い事や、家族旅行といった、今しかできないことに使うことも、とても大切な使い方だと思います。しかし、「もとはなかったお金」と考えて、資産運用にまわせると、とても効率的に必要なお金を準備できます。

住宅ローン控除還付金を教育資金や老後資金に

例えば、先程の例で3,000万円のローンを組んだ場合、住宅ローン控除の合計金額は、2,560,960円でした。これを年換算すると、約25.6万円、月換算すると、約2万円になります(厳密には、控除額は毎年変わりますし、年収等によっては全額控除出来ない場合もあります)。

仮にこの月2万円を控除期間の10年間積立てをして、住宅ローンの残りの期間25年間は運用で寝かして置いたとしましょう。

シミュレーションに入力するのは、

・住宅ローン返済期間:10年(住宅ローン期間と運用期間は同じになります)
・投資運用額:0万円
・想定利率:3%
・積立投資:毎月2万円

すると、運用結果が2,790,000円になります。

次に、シミュレーションに以下のように入力します。

・住宅ローン返済期間:25年(住宅ローン期間と運用期間は同じになります)
・投資運用額:279万円
・想定利率:3%
・積立投資:毎月0万円

すると、運用結果が、5,900,692円になります。

つまり、住宅ローン控除で帰ってきた税金を10年間積み立てて、残り25年間寝かしておくと、住宅ローンが終わったタイミングで約590万円になります。

もともと税金として払っていたので、なかったものとして考えるとしたら、0から590万円を作り出せたと考えられなくもないですね。

もちろん、途中で引き出して教育資金等で使うこともできます。

住宅ローン控除還付金を繰上げ返済に

先ほどと同じく、毎月2万円を10年間運用しながら積み立ててできた279万円を、住宅ローンの繰上げ返済の資金にあてるという選択肢もあります。
ところで、繰上げ返済をすると実際いくらお得になるのでしょうか?

繰上げ返済はいくらお得になるのか

繰上げ返済しない場合とする場合で利息はいくら変わるのか、シミュレータで試算してみます。

繰上げ返済しない場合

2で試算したときと同じ、物件価格3,000万円で試算します。シミュレータに入力する数値は2-2と同じです。
結果は、利息合計が2,707,560円となりました。

繰上げ返済する場合

10年後に279万円繰上げ返済する場合を試算します。
シミュレータに以下の条件を加えます。

・121ヶ月目に279万円繰上げ

結果は、利息合計が2,514,878円、返済期間は31年10ヶ月となりました。

繰上げ返済していくらお得になったか

今回の繰上げする場合としない場合の利息合計の差は、192,682円です。
また、繰上げ返済することで返済期間が3年2ヶ月短縮されています。
つまり、11年目に繰上げ返済で279万円を入れたことで、利息分の192,682円お得になったということです。

では、11年目で279万円を繰上げ返済に使わず、運用していくとしましょう。
先程の計算で、11年目で繰り上げ返済した場合、31年10ヶ月でローン返済が終わりました。

ですので、今回は運用した分をキリ良く32年目で繰り上げ返済した場合はどうなるかを検証してみましょう。

繰上げ返済せずに運用した場合

279万円を繰上げ返済に使わずに、21年間3%で運用する想定で試算します。

以下の数値をシミュレータに入力します。

・住宅ローン返済期間:21年(ここが運用期間になります)
・投資運用額:279万円
・想定利率:3%
・積立投資:毎月0万円

結果、279万円は21年間運用することで5,234,248円になりました。

この523万円を32年目、つまり384ヶ月目に繰り上げ返済するとどうなるでしょうか。

実はローンとしては、2,371,238円しか残っていないので、この金額を支払って、手元に2,858,762円が残ります。

そして、実は住宅ローン控除での還付金の分を35年3%で運用すると5,900,692円になるというのは、前に試算しました。
35年繰り上げ返済せずに支払い切ると、利息額は2,707,560円でしたね。
そうすると、差し引き3,193,132円になります。

つまり、まとめると、
住宅ローン控除で返ってきた税金分を3%で運用するという条件は同じで、

○住宅ローン控除の期間が終わった11年目で繰り上げ返済した場合は、
192,682円の利息軽減効果

3年2ヶ月の返済期間短縮

○32年目で繰り上げ返済した場合、
2,858,762円手元資金が残る

3年の返済期間短縮

○繰り上げ返済をしなかった場合、
5,900,692円が手元に残る
※利息分との差し引きは、+3,193,132円

このような結果となりました。
どこを優先で考えるかは人それぞれだと思います。
繰上げ返済を考えている方は、一度シミュレータを活用して、このように利息合計や返済期間を確認してみるといいですね。

変動金利は資産運用がリスクヘッジになる

中には、「資産運用はよくわからないし怖いから、定期預金や養老保険だけ」という方もいるかと思います。しかし、そんな方でも、住宅ローンの金利は変動型を選んでいる方がほとんどではないでしょうか。そんな方に一度考えてみていただきたいことがあります。

「自分の資産は固定金利で管理するけど、借金(住宅ローン)は変動金利で管理する」という、不思議な現象が起こっていることにお気づきでしょうか。

金利が上がると、変動金利である借金(住宅ローン)の利息は増えるのに、固定金利に預けている資産の利息は増えません。資産を固定金利だけで管理していると、借金(住宅ローン)の金利上昇のリスク対策にはならないということです。

「金利上昇により借金(住宅ローン)が増えても、自分の資産も増えている」という仕組みを持っておくことは、安心のひとつになります。住宅ローンを変動金利型で組んでいる方は、金利上昇のリスク対策として、資産運用することをおすすめします。

まとめ

・住宅資金・教育資金・老後資金の優先順位は老後資金が最優先
・住宅購入時に頭金を入れずに、その資金を運用するという選択肢もある
・住宅ローン控除の還付金を運用して、教育資金や老後資金にする選択肢もある
・繰上げ返済は本当にお得か、シミュレータを使って確認してみよう
・変動金利は資産運用がリスクヘッジになる

住宅ローンの借入金額や金利等は、家庭によって本当にさまざまです。自分たちの場合、どのように住宅ローンと資産運用を組み合わせるのがベストの選択肢なんだろう…

そんなときに、JLsim 高機能住宅ローン返済シミュレータはとても便利です。

お得になる金額がわかると、資産運用のやる気もぐっと上がると思います。ぜひ活用してみてはいかがでしょうか。

※今回は運用益に対する税金は考慮していません。実際は、運用益には税金がかかる場合があります。


【寄稿者: FP心平 プロフィール】

業界9年目の子育て世代専門ファイナンシャルプランナー。現役で保険代理店に勤務しており、子育て世代のパパママへ「自分にぴったりの保険・投資・住宅ローン選び」をサポート。

サイト: https://www.instagram.com/fpshinpei/


※JLsim編集部注※

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