中古住宅を購入する際に利用できる住宅ローンの選択肢として、【フラット35】は長期間の固定金利というメリットから人気を集めています。そんな【フラット35】の中でも、中古住宅購入者向けの優遇制度として「【フラット35】中古プラス」があります。2025年度から制度内容が一部変更となることから、本記事では最新の情報をもとに【フラット35】中古プラスについて詳しく解説します。
1. 【フラット35】中古プラスとは
【フラット35】中古プラスとは、一定の基準を満たした中古住宅を購入する際に、【フラット35】の借入金利を一定期間引き下げる制度です。住宅金融支援機構が提供するこの制度は、良質な中古住宅の流通促進を目的としています。
【フラット35】は住宅金融支援機構と民間金融機関が提携して提供する最長35年の全期間固定金利の住宅ローンで、借入時点で返済終了までの金利・返済額が確定するため、長期的な生活設計が立てやすいというメリットがあります。
2. 2025年度からの制度変更点
2025年度からの【フラット35】中古プラスの主な制度変更点は以下の通りです。
リフォーム工事金額要件の撤廃
2025年4月以降の物件検査申請分から、リフォーム工事金額の要件がなくなります。これにより、リフォーム費用の金額に関わらず、一定の基準を満たす中古住宅であれば【フラット35】中古プラスを利用できるようになります。
検査内容の追加
現行の【フラット35】の物件検査に加え、以下の検査箇所について目視で確認できる範囲において、劣化等がないことを確認する検査が追加されます。

- 給排水設備
- 給湯設備
- その他劣化状況の確認
※マンションの場合、専用部分の給排水・給湯設備が対象となります。
なお、この検査では「目視で確認できる範囲において著しく機能性を失っていないこと」を確認することが必要です。
対象マンションの拡大
2025年10月以降の資金実行分から、長期優良住宅に加えて、予備認定マンション、管理計画認定マンションの取得でも【フラット35】中古プラスを利用できるようになります。これにより、より多くの良質な中古マンションでも金利優遇を受けられる機会が増えることになります。
3. 【フラット35】中古プラスの金利優遇内容
【フラット35】中古プラスを利用すると、通常の【フラット35】よりも借入金利が優遇されます。具体的な金利優遇内容は以下の通りです。
- 当初5年間、年-0.25%の金利引き下げ
- 【フラット35】中古プラスの適用で1ポイント付与(ポイント制度)
この金利引き下げにより、借入額3,000万円(融資率9割以下)、借入期間35年、元利均等返済、ボーナス返済なしの場合、【フラット35】中古プラスを利用すると、通常の【フラット35】よりも総返済額が約40万円お得になります。
また、他の金利引き下げメニューと併用することで、さらなる優遇を受けることができます。例えば、【フラット35】中古プラスと【フラット35】S(金利Bプラン)を併用すると、総返済額が約80万円お得になります。さらに、【フラット35】子育てプラス(子ども1人)と組み合わせると、総返済額が約120万円もお得になるケースもあります。
4. ポイント制度と併用可能なメニュー
【フラット35】では金利引下げポイント制度が導入されており、【フラット35】中古プラスも以下のようなポイント制度の対象となっています。

ポイント制度の仕組み
- 1ポイント = 当初5年間、年-0.25%の金利引き下げ
- 最大4ポイントまで適用可能(当初5年間、年-1.0%の金利引き下げ)
- 4ポイントを超える分は、借入期間6~10年目に繰り越し可能
併用可能なメニュー
【フラット35】中古プラスは以下のメニューと併用することができます。
- 【フラット35】S(金利Aプラン・金利Bプラン)
- 【フラット35】子育てプラス
ただし、【フラット35】中古プラスと【フラット35】維持保全型(インスペクション実施住宅に限る)の併用はできないので注意が必要です。

金利引き下げポイントの付与条件
ポイントは以下の条件によって付与されます。
- 住宅の性能に関するポイント
- 【フラット35】中古プラス:1ポイント
- 【フラット35】S(金利Bプラン):1ポイント
- 【フラット35】S(金利Aプラン):2ポイント
- 【フラット35】維持保全型:1ポイント
- 【フラット35】S(ZEH):1ポイント
- 家族構成に関するポイント
- 若年夫婦世帯(借入申込時に夫婦で、借入申込年度の4月1日において夫婦のいずれかが40歳未満):1ポイント
- 子ども1人につき:1ポイント(借入申込年度の4月1日において18歳未満の子ども)
5. 申込から利用までの流れ
【フラット35】中古プラスを利用するための一般的な流れは以下の通りです。
STEP1: 取扱金融機関への事前相談・申込
まずは【フラット35】の取扱金融機関に相談し、融資の仮審査申込を行います。金融機関によって金利や手数料などの条件が異なるため、複数の金融機関に相談することをおすすめします。
STEP2: 物件の検査依頼
購入を検討している中古住宅が【フラット35】の技術基準を満たしているか、また【フラット35】中古プラスの条件を満たしているかを確認するための物件検査を依頼します。検査は住宅金融支援機構が指定する「適合証明検査機関」または「適合証明技術者」によって行われます。
2025年4月以降の物件検査申請分からは、給排水設備や給湯設備などの検査も追加されるため、それらの状態についても確認されます。
STEP3: 適合証明書の取得
物件検査の結果、【フラット35】の技術基準に適合していることが確認されると、「適合証明書」が発行されます。【フラット35】中古プラスの場合は、追加の検査項目についても適合していることが証明されます。
STEP4: 本申込と契約
適合証明書を取得した後、取扱金融機関に【フラット35】の本申込を行います。審査に通過すると、金銭消費貸借契約の締結、抵当権設定などの手続きを行います。
STEP5: 融資実行
すべての手続きが完了すると、融資が実行され、購入資金が売主に支払われます。以降は契約に基づいて返済を行っていきます。
6. 【フラット35】中古プラスを利用するメリット
【フラット35】中古プラスを利用する主なメリットは以下の通りです。
金利優遇による返済負担の軽減
当初5年間、年-0.25%の金利引き下げにより、返済負担が軽減されます。特に返済初期は元金よりも利息の割合が大きいため、この金利優遇は大きな節約効果をもたらします。
他の優遇制度との併用が可能
【フラット35】Sや【フラット35】子育てプラスなど他の金利優遇制度と併用することができるため、条件によっては最大で年-1.0%の金利引き下げを受けることができます。
質の高い中古住宅の購入をサポート
【フラット35】中古プラスの審査を通過するには、物件が一定の品質基準を満たしている必要があります。これにより、購入する中古住宅の品質が確保され、将来的なリフォームや修繕費用の軽減にもつながる可能性があります。
2025年度からの制度改正によるメリット
リフォーム工事金額の要件が撤廃されることで、より柔軟に制度を利用できるようになります。また、予備認定マンションや管理計画認定マンションも対象となることで、選択肢がさらに広がります。
7. 注意点とよくある質問
【フラット35】中古プラスを利用する際の注意点やよくある質問をまとめました。
予算金額には上限がある
【フラット35】中古プラスには予算金額があり、予算金額に達する見込みとなった場合は、受付が終了されます。受付終了日は、終了する約3週間前までに住宅金融支援機構のウェブサイトでお知らせされるので、定期的に確認することをおすすめします。
借換融資には利用できない
【フラット35】中古プラスは中古住宅の購入の際にのみ利用できます。すでに住宅ローンを組んでいる物件の借換えには利用できないので注意が必要です。
維持保全型との併用はできない
【フラット35】中古プラスは、【フラット35】維持保全型(インスペクション実施住宅に限る)と併用することはできません。それぞれのメリットを比較検討し、自分に合った制度を選びましょう。
ペアローンでも利用可能
夫婦などでローンを分けて借りる「ペアローン」の場合でも【フラット35】中古プラスを利用することができます。
Q: 築年数の古い物件でも利用できますか?
A: 基本的には築年数による制限はありませんが、【フラット35】の技術基準を満たす必要があります。特に昭和56年5月31日以前に建築確認を受けた住宅の場合は、耐震評価基準に適合することが必要です。また、2025年4月以降は給排水設備や給湯設備の状態なども確認されます。
Q: 検査費用はどれくらいかかりますか?
A: 物件検査の費用は検査機関によって異なりますが、一般的には数万円から10万円程度かかります。正確な金額は各検査機関にお問い合わせください。なお、【フラット35】中古プラスの場合、追加の検査項目があるため、通常の【フラット35】よりも費用が高くなる場合があります。
Q: 金利引き下げは確実に受けられますか?
A: 物件が基準を満たし、予算枠内であれば金利引き下げを受けることができます。ただし、取扱金融機関または住宅金融支援機構の審査結果によっては、希望に沿えない場合もありますので、事前によく確認しておくことをおすすめします。
8. まとめ
【フラット35】中古プラスは、良質な中古住宅の購入を支援するための金利優遇制度であり、2025年度からは制度が一部変更されます。リフォーム工事金額の要件撤廃や対象マンションの拡大などにより、より利用しやすい制度となりました。
他の金利優遇制度と併用することで、最大で年-1.0%の金利引き下げを受けることができるため、住宅ローンの返済負担を大きく軽減できる可能性があります。特に長期間の返済を予定している方にとっては、初期の金利引き下げの恩恵は大きいでしょう。
ただし、予算金額には上限があること、維持保全型との併用ができないことなど、いくつかの制限もあります。中古住宅の購入を検討している方は、この記事を参考に【フラット35】中古プラスの活用を検討してみてはいかがでしょうか。
参考情報・引用元
- 住宅金融支援機構「【フラット35】中古プラス」
- 住宅金融支援機構「【フラット35】2025年度制度改正のお知らせ」
- 日本住宅ローン株式会社「フラット35について」
- 中古住宅のミカタ「「【フラット35】子育てプラス」とは?2024年2月に新設された新しい住宅ローンの仕組みと、子育て世帯が使える支援制度を専門家が解説」
- 三井住友信託銀行「フラット35」
※本記事の内容は2025年4月時点の情報に基づいています。最新の情報は住宅金融支援機構の公式サイトでご確認ください。
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【執筆:JLsim編集部】
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