前回の記事に引き続き、ほぼ同じ条件(フラット35Sの金利Aプランで4000万円を借りた想定)で、JLsim 住宅ローン&資産運用シミュレータを使って試算してみます。
今回は「毎月5万円の余剰資金がある」と仮定して、それをどう扱ったら最も得になるかをシミュレーションしてみたいと思います。毎月5万円を積み立てていけば年間で60万円貯まります。それを毎年末に繰上返済に充てたらどうなるか。あるいは繰上返済せずに投資に回したらどうなるか。
余剰資金を全て繰上返済に充てるパターン
毎月5万円貯金して、年末に60万円を繰上返済に充てる場合の入力データは下記の通り。
上記のように入力して計算ボタンを押すと下記の結果が出力されます。
上記のように、当初10年間、毎年60万円を繰上げ返済していくことによって、返済年月が短縮されて35年ローンが28年10カ月で終わる試算となります。11年目からは繰上返済せずにそのまま預金していく設定となっていますので、ローン完済時には1,730万円が貯まっている計算になります。なお預金利率は0%として計算しています。
余剰資金を全て投資に回すパターン
次に、毎月の余剰資金5万円を全て投資に回したらどうなるかを試算します。全てをS&P500のようなインデックス投資に回したと仮定し、平均利回りはかなり保守的に低めに見積もって3%だと仮定します。
平均利回り3%で投資運用した場合
入力データは下記の通り。さっきと異なるのは、繰上げ返済の値を削除し、予定運用利率の欄に「3」と入力した点です。
これで計算ボタンを押した結果が下記の通りです。
上記の試算結果をご覧の通り、繰上返済しないので返済にかかる年月は35年のままですし、利息も予定通り支払うことになります。しかし、毎月5万円の余剰資金を投資に回して3%で運用できたら、結果的にローン完済時の資産額が3,700万円となっています。ローン利息との差し引きで正味損得が約2,895万円のプラス。これは大きいですね。
繰上返済しない場合のメリット(万が一の際の団信の効果が最大限になる)も併せて考えますと、ただ貯金するだけとか繰上返済するだけとかよりも、投資に回すというのも大きな可能性を秘めていると言えそうです。
運用の平均利率が5%ならどうなる?
では、投資を平均5%で運用できたらどうなるか? 過去数十年の米国株式インデックスの動きを見ますと5%でもまだ控えめな数字ですので、十分にありえる利回りです。5%で運用できた場合の試算結果は下記の通り。
この場合は当然、資産の運用結果が高まりますので、35年間のローン利息との差し引きで正味損得が約4,867万円のプラス。老後資金としてこれだけあったら安泰ですね。
途中のアクシデントに耐えられるキャッシュがないと危ない
このように、投資で資産運用するとバラ色の未来が待っているように思えます。
しかし注意しなければならないのは、これは「運用資産を途中で一切いじらない」という大前提を守らなければいけないという点です。途中で大きな含み損になって不安になって売ってしまったり、何か大きな出費が必要になってキャッシュが足りず、投資資産を売却したり。
そういうことがあると、当然、資産はこのシミュレーションの通りには増えません。数%の複利でコツコツ増やすには長期間「いじらずに耐える」ということが必要になりますので、投資初心者の方にはかなり難しい忍耐となるでしょう。
たとえば「急に家族の誰かが大病してお金が必要」とか、「子供が医学部に進学することになって大金が必要」とかになると、嫌でも投資を解約しなければキャッシュが足りないという事態になりかねません。そのタイミングがたまたま市況が悪く株価が暴落しているタイミングだったりしたら目も当てられません。長期運用が前提なら株価暴落時でも解約せずにただホールドして回復を待っておけばいいものを、売却を強いられると損切り確定となってしまうのです。
今回の試算では「毎月の余剰資金を全て預金、または全て投資」という極端な条件で計算しました。しかし現実には前述したような「想定外のアクシデントに備えられるだけのキャッシュ」を常に手元に置いておき、それでも余った資金を投資に回すというのが現実的な解となるのではないでしょうか。投資に全振りするのは上手くいけば大きく増えますが、想定外のアクシデントには弱く、かなりリスクが高いやり方です。
もちろん預貯金(キャッシュ)に全振りするというのもそれはそれでリスクが高いのですが、話が長くなるのでまた別の記事で詳しく書きます。
あなたもシミュレーションしてみよう
このように、試算する条件によって結果は大きく変わってきます。ご自身の人生プランや収入・出費などを考えて、いろいろな値で計算してみましょう。
【執筆:JLsim編集部】
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