「変動金利」と「固定金利」これからの住宅ローンどう選ぶ?

住宅ローン返済考察

【寄稿者:2級FP・AFP 山﨑裕佳子さん】

住宅ローンの「変動金利」と「固定金利」を考えるとき、つい金利差だけに気を取られがちですが、両者の違いはそれだけではありません。どちらを選択したほうが良いのかは、個々の考え方やライフプランによっても異なります。

それぞれの金利の特徴を理解し納得できる住宅ローンを選びましょう。

住宅ローン金利は金融政策と密接な関係がある

変動金利と固定金利の金利差はそれぞれの指標の違い

そもそも、「変動金利」と「固定金利」の金利差はどこからきているのでしょうか。
変動金利は、日本の短期金利に連動しています。
そのため、日銀の金融緩和による低金利政策が影響し、変動金利は長期間にわたり低金利のまま推移しています。

固定金利は、日本の10年物国債(10年債)の利回りを指標としています。
10年債は、米国の金利に連動しているため、昨今の米国での大幅利上げは、本来であれば日本の長期金利の上昇の要因になります。

しかし、今、日本で長期金利が上がると、デフレから脱却しきれていない経済はさらに冷え込むことも予想されます。たとえば、住宅ローンの固定金利が上がってしまうと、不動産の買い控えがおこり不動産市場に悪影響を及ぼすことも懸念されます。

日銀は、長期金利の上昇を回避するために、2013年から無制限に国債を買い入れ、利率が0.25%を超えないようにコントロールしています。

変動金利と固定金利は、指標となるモノサシが異なります。そして、その金利は国の金融政策が大きく影響しているのです。

住宅ローン金利のターニングポイントは2023年4月以降か

利上げをする米国と金融緩和を続ける日本、日米の金利差が円安を引き起こしています。加えてウクライナ情勢も重なり、モノやエネルギーの多くを輸入に頼る日本では物価が上昇しています。

本来であれば、円安が引き起こす物価上昇も長期金利を押し上げる要因となり、固定金利に影響を及ぼします。しかし前述の通り、現在、日銀の人為的な介入により金利はコントロールされているため、実際は20年以上、住宅ローン金利に大きな変動は見られません。

10月28日に開催された金融政策決定会合において、日銀は金融緩和の継続を改めて表明しています。この方針が変わらない限り住宅ローンの金利が大きく変動することはないという見方もされています。

しかし、日銀の黒田総裁の任期は来年4月まで。その後、金融政策の転換、つまり金融緩和が終わりを迎えたときに、住宅ローンの金利も上昇する可能性があるのです。

金利を選ぶ前に知っておいたほうがいいこと

変動金利の特徴と向いている人

「変動」は一般的に「固定」より低い金利設定のため、毎月の返済額を抑えたい人に向いています。

借入期間中、金利の上昇がなければ、固定金利より利息が少なくて済むため返済総額が固定を選択するよりも少なくなります。

しかし、変動金利は、市中金利が上がることでローン返済額が増えてしまう可能性があります。現在、変動金利を利用している方の多くは1%未満の金利で借り入れをしていますが、将来的に低金利のままである保証はありません。

固定金利の特徴と向いている人

固定金利は、市中金利に関係なく契約時の金利で返済額が確定するため見通しが立てやすく、家計管理がしやすいという安心感が最大の利点です。

しかし、一般的に固定期間が長期になるほど適用金利が高くなります。借入期間中に変動金利が上昇しなければ、返済総額は変動金利を選択した場合より多くなってしまいます。

今後、金利が上昇局面になると予想する場合や、性格的に安心を優先したいと考える人に向いています。

変動金利で適用される 5年、125%ルールを知っておく

住宅ローンの返済方式には、「元利均等返済」と「元金均等返済」の2つの方式がありますが、住宅ローン契約者の多くは、毎月の返済額を一定額とする「元利均等方式」を利用しています。

変動金利を元利均等方式で返済する場合、金利上昇場面での家計負担を軽減するために、「5年、125%ルール」が設けられています。

金利は一般的に半年に一度見直されますが、たとえ金利が上がっても、5年間は返済額を変えない、また、6年目以降の増額幅を元の金額の1.25倍以内とするというルールです。

たとえば、月々10万円の返済額が、金利の見直しにより13万円になっても、5年間は10万円の返済額がキープされ、6年目の返済額も最大で12.5万円です。

このルールにより、家計に与えるインパクトは軽減しますが、増額分の返済が免除されるものではないことに注意が必要です。元本の返済が先送りされるだけで、ローンの借入期間満了時に残債が発生していれば一括返済を求められます。

また、5年、125%ルールを導入していない金融機関もありますので確認をしてください。

ライフプランから金利タイプを選ぶ

これから住宅ローンを借りる人

変動のメリットは裏返せば固定のデメリットになります。逆に、固定のメリットは変動のデメリットになり得ます。結局どちらを選んだらいいのかわからないという時には、ライフプランから金利を選ぶのもひとつの方法です。

たとえば、20代、30代の若い世代では30年以上のローンを組むこともあるでしょう。
返済期間が長くなれば将来の金利の動向を予測することはますます困難となるため、変動金利選択のリスクは高まります。
さらに、子どもが小さい場合などこれからライフイベントを多く控えている場合では、将来に必要となる資金が流動的です。

このようなケースでは、固定金利を選択して住宅ローンの返済額を確定すれば、その他の資金計画は立てやすくなります。

逆に、住宅ローン返済期間が短い場合や、ライフイベントの資金の目途がついている場合など、金利上昇場面に対応できる家計であれば変動金利を選択するという方法もあるでしょう。

住宅ローンを返済中の人

住宅ローンは借り換えが可能です。住宅ローン金利が上昇局面に入ると、一般的に固定金利が先に上昇し、後追いで変動金利が上がります。

固定金利に上昇傾向が見られると、変動も上がるのでは?という憶測から、変動金利を利用している人たちの中で、固定金利へ切り替える動きが起こります。変動金利が上がり始めるころには、固定金利はもっと上がってしまっているからです。

実際、今年に入りメガバンクで固定金利が一時上昇傾向を示したことから、変動金利から固定金利への借り換えの動きが見られました。しかし、今回、変動金利が上昇することはありませんでした。

繰り返しになりますが、少なくとも、来年の4月(黒田総裁の任期満了)までは、今の住宅ローンの金利が大きく変動する可能性は低いという考え方が主流のようです。

しかし、来年4月以降、日銀の総裁交代と共に金融緩和が終了したら、変動金利が急上昇することもあり得るのです。安全策を取るのであれば、固定金利への借り換えも視野に入れる必要があるかもしれません。

返済総額を抑えるために金融機関を比較する

変動金利と固定金利の選択で悩むのは結局、金利差が生む返済総額の違いです。

なるべくお得に借り入れをするためには、変動 vs 固定という概念だけでなく、いくつかの金融機関の金利を比較することも重要な要素となります。

住宅ローンは長期的な返済となるため、少しと思える金利差でも返済総額に数百万円の差となって表れます。

たとえば、S銀行とM銀行では固定金利に0.51%の差があります。

3,000万円を借り入れ30年で返済した場合、返済総額に約270万円の差がでます。

借入金額:3,000万円
返済期間:30年
返済方式:元利均等方式

 S銀行 固定金利 1.7%M銀行 固定金利 2.21%
利息8,318,062円11,062,422円
返済総額38,318,062円41,062,422円
(上記試算には https://jlsim.jp/ を使用 )

いくつかの金融機関の適用金利を比較して返済額をシミュレーションしてみることをおすすめします。

まとめ

変動金利と固定金利、どちらを選ぶべきかは、最終的には本人の判断しかありません。

金利はどう決まるのか? 変動と固定の特徴と自分のライフプランを照らし合わせるなど、判断材料を持っておくことが大切です。

すでに住宅ローンを返済中の方で借り換えを検討する場合は、手数料等の費用も含めて総合的に判断することも重要でしょう。

金融機関ごとに様々な商品が販売されています。いくつかの金融機関を比較することも返済額を抑えるポイントです。


【寄稿者:山﨑裕佳子 プロフィール】

通関士として通関業務に7年携わった後、メーカーにて海外営業事務、銀行にてテラーほか様々な仕事を経験。ワークライフバランスを大切にしている。
2019年、FP2級技能士、AFP資格を取得。その後、独立系FP会社に1年半所属し、執筆、校正の経験を積み、相談業務を勉強する。2021年春よりフリーランスで活動を始め、2022年5月、FP事務所MIRAI設立。現在は、相続、不動産、保険、ライフプラン、税金分野などで多数の執筆をしている。


※JLsim編集部注※

当サイトでは外部の複数の寄稿者様から記事の提供を受けています。寄稿者様のお考えと当サイトの考え方は必ずしも一致するとは限りません。複数の多様な意見や考え方を元に、記事を読んだあなた様ご自身で住宅ローンの返済や投資などについて意思決定できるようにするため、当サイトがその一助となれば幸いです。

コメント

タイトルとURLをコピーしました